からだが、へる。
はらが、すく。 なにかが、たりなくなる。
それだけのことを、 わたしたちはずいぶんとおおげさに 「くるしみ」と呼んでいる。
おなかがすいたとき、 すこしのあいだ、じぶんのことが よくみえる。
たべもののことしか かんがえられなくなる。 かねのことも、 めんぼくのことも、 だれかにどうおもわれるかも、 ぜんぶ、どこかへいく。
のこるのは、 ただの、からだ。
ここにある、 ちいさくて、あたたかい、 このからだ。
ひとつのりんごが、 うちゅうのすべてになる。
それが、 はらがへる、 ということ。
わたしは、いつも おなかをすかせたまま ものをかんがえたい。
そのほうが、 ほんとうのことが すこしだけ みえるきがするから。
これを「さとり」とは よばないほうがいい。
ただ、 はらがへっている だけだ。